さよならのあとに・・・ Ⅱ
駅のホームへ降り立つときには、もうどうすべきかわかっていた。
人の波に逆らい、ホームのベンチに腰掛ける。
そして、人が疎らになったところで携帯のボタンを押す。
ワンコール鳴るごとに緊張が増していく…
柄にもなく、どきどきしている自分がいた。
『もしもし…』
4コール目で彼が出た。
「私…ごめんよ、いきなり…」
『ううん、いいよっ…』
気まずい沈黙。
たった2時間で、こんなにも変わっちゃうんだ…
そう言うと、彼はなんとなく笑った。
今なら…言える
「…今…あの時と同じ場所にいるの」
『うん…』
「君は新潟じゃないけど。…何かいいよね」
『そうだね』
「それでね…もう最後になっちゃうかもしれないから……言いたいことがあるの」
『……うん』
電話の向こうから緊張が伝わってきた。
私の緊張も…伝わってるのかな…
「いっつも…たくさん愛してくれてありがとう。
普段は感謝の欠片もないような態度しかとれなかったけど、ホントはすっごく嬉しかった。
こんなに優しくされてたのに、ずっと当たり前みたいに思ってて…今になってやっとわかったの。
私…こんなに大切に扱ってもらってたんだね。
……ありがとう…」
彼は無言だった。
否……言葉が出なかったんだろう。携帯の向こうから嗚咽が聞こえてきた。
収まってきた感情が再び溢れ出す。滴る雫を今度は拭うことなく、言葉を継ぐ。
「服のセンスとか悪いし、見た目でかっこいいとか一回しか思ったことないけど…
……でも…大好きだったよっ……」
とめどなく伝う涙をやっと拭い始めた時、彼が言った。
『ありがとう……凄く嬉しい…』
「もう言ってやんないもん…バカ…」
『…ゆう。俺、頑張るから』
「頑張れ、浪人生…」
あぁ、やっと笑えた気がする――
初めての告白は涙と笑顔で幕を閉じた。
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