さよならのあとに・・・ Ⅲ
夜になって、また涙が溢れてきた。
もう…これは赤目決定だな
なんて冷静に考えつつ、昼間のメールをもう一度開いた。
『来年の3月の終わりにまた会おうよ
今の俺じゃ何もできないや
それまで 離れよう』
一言一言の重みを改めて感じた。
お互いに気持ちは薄れてなくて、それぞれが互いの相手を求めている。
それが叶わぬとなると、身を裂かれるような痛みが体を貫く。
けれど、約束は約束。
この辛さを乗り越えたら…新しい道が開かれるかな?
でも…私に耐えられるかな…
その時、あることに気付いた。メールにスクロールバーがついてる…。
最初に見える内容ばかりに囚われて、確認するのを忘れていた。
スクロールしていくが…真っ白なページが続く。
ずっと下までスクロールすると、一行だけ言葉があった。
『ごめんね ありがとう』
枯れきったはずの涙がとめどなく溢れ出た。
あぁ…私はなんて幸せ者なんだろう
彼の最後の言葉で、こんなにまでなれる私なら…
一年間、頑張れる気がした
fin.2007.01.26
さよならのあとに・・・ Ⅱ
駅のホームへ降り立つときには、もうどうすべきかわかっていた。
人の波に逆らい、ホームのベンチに腰掛ける。
そして、人が疎らになったところで携帯のボタンを押す。
ワンコール鳴るごとに緊張が増していく…
柄にもなく、どきどきしている自分がいた。
『もしもし…』
4コール目で彼が出た。
「私…ごめんよ、いきなり…」
『ううん、いいよっ…』
気まずい沈黙。
たった2時間で、こんなにも変わっちゃうんだ…
そう言うと、彼はなんとなく笑った。
今なら…言える
「…今…あの時と同じ場所にいるの」
『うん…』
「君は新潟じゃないけど。…何かいいよね」
『そうだね』
「それでね…もう最後になっちゃうかもしれないから……言いたいことがあるの」
『……うん』
電話の向こうから緊張が伝わってきた。
私の緊張も…伝わってるのかな…
「いっつも…たくさん愛してくれてありがとう。
普段は感謝の欠片もないような態度しかとれなかったけど、ホントはすっごく嬉しかった。
こんなに優しくされてたのに、ずっと当たり前みたいに思ってて…今になってやっとわかったの。
私…こんなに大切に扱ってもらってたんだね。
……ありがとう…」
彼は無言だった。
否……言葉が出なかったんだろう。携帯の向こうから嗚咽が聞こえてきた。
収まってきた感情が再び溢れ出す。滴る雫を今度は拭うことなく、言葉を継ぐ。
「服のセンスとか悪いし、見た目でかっこいいとか一回しか思ったことないけど…
……でも…大好きだったよっ……」
とめどなく伝う涙をやっと拭い始めた時、彼が言った。
『ありがとう……凄く嬉しい…』
「もう言ってやんないもん…バカ…」
『…ゆう。俺、頑張るから』
「頑張れ、浪人生…」
あぁ、やっと笑えた気がする――
初めての告白は涙と笑顔で幕を閉じた。
さよならのあとに・・・ Ⅰ
無理があるなんて、とっくにわかってた。
でも、心のどこがでずっと否定してきた。
それを認めてしまった時、今まで築き上げてきた全てのものが壊れてしまう…
そうなるのが怖かったから。
さよならのあとに・・・ Ⅰ
携帯が小さく震え、一通のメールの着信を告げた。
おそるおそるメールを開くと、そこには虚しい言葉達が並んでいて、私の心を蝕んでいった。
霞んでいく画面を睨みつけ、震える手でボタンを押していく。
やはり、内容は空虚なものだった。
もう…終わりの瞬間が見えていたのかもしれない。
手の中にあった携帯が再び震えだした。
ずっと強く握っていたためか、携帯はうっすらと汗をかいている。
メールの受信ボックスを開き、緊張を和らげるように大きく息を吸い込んだ。
ぎゅっと目を瞑り、ボタンを押す…。
ゆっくりと、表れた画面に目を通した。
『来年の3月の終わりにまた会おうよ
今の俺じゃ何もできないや
それまで 離れよう』
自然と、涙が頬を伝った。
自分が電車内という公共の場にいるのにも関わらず、声を押し殺して、こみ上げてくるものを吐き出した。
気付けば袖口まで涙の染みができていて…
慌ててタオルを取り出すが、それはたいした意味を持たず、こぼれ落ちた雫は水玉を描いた。
声にならない言葉たちが、雫と共に溢れ出す。
何駅も何駅も通り過ぎ、いつのまにか見慣れた風景の中を通っていた。
帰りの電車を待つ間、買ってくれたポテト。奢ってもらってたくせに、私ばっか食べていて。
それでも、「美味しそうに食べててかわいい」なんて言ってくれた。
最寄り駅まで一緒に帰るのは週に一回って決めてたのに、喧嘩したら解決するまでわざわざついてきたりして。
しかも喧嘩の理由は思い出せないくらい馬鹿らしくて…単なる勘違いだって分かったときは笑うしかなかった。
でも、少しでも長くいられるのが嬉しくて、同じことを繰り返しちゃう。
私の最寄り駅まで来ると、いつも心配そうに見つめてくる。
降りるとお金がかかりすぎるし、そんな時間もない。そんなジレンマもあったね。
そうやって一緒に帰った記憶も、今ではただ悲しいだけ。
…私は、彼に何かしただろうか?
私ばかり、たくさんのモノを貰って
私ばかり、たくさんの愛を貰って
私は…何かあげただろうか?
私は、ろくに「好き」とも言わなければ、「愛」を感じさせてもいない。
ただ、私の寂しいときに側にいて、私のツラいときに話を聞いてもらってた。
結局、私は愛されっぱなしだ。
こんな私相手で、よく今まで続いたと思う。
こんな私でも、最後にできることがあるかな…。
愛の叫び
6月にもなるとだいぶ暑くなってくる。
学校前の坂を上り下りしているともう汗だくだ。
さらに今日みたいな週始めとなると、全ての気を奪われてるんじゃないかってくらいやる気がしない。
それでも、やっとこさ4階の教室にたどり着いた。
席について一息つき、まだ少ないクラスメイトたちと週末のだらけ具合を語ろうと席を立った。
そのとき…。
「周助の頭にボールがあぁーーー!!!!!」
朝からものすごい勢いで教室に飛び込んできた少女……たしか、笠原さんだっけ?
彼女は、既に教室にいた松原さんに飛びつくと、事の詳細を話しだした。
「あのね、先週周助がリードしてたでしょ?今週も超かっこよく赤也を負かしてたわけ。だけど、あの雨の日の決闘シーンが回想で出てきて…あ、あのときの周助もちょーいいけどね♪絶対あのままやってたらリョーマに勝ってただろうけどwんで、手塚との1シーンやら関東大会の手塚対跡部やら出てきたら『隙見ーっけ!』とか赤也がほざいて頭にガーン!!だよ?もうテニスとしてどうよ??周助に何かあったら暴動起きるよ!!でもスリルを求めてゾクゾクしちゃう周助もかっこいいよねvv」
「あー……私も今週の見たんですケド」
笠原さんのマシンガントークにたじろぐ松原さん。
その言葉を聞いて、笠原さんは瞳を輝かせた。
「マジで!?めっちゃ酷くない?赤也ふざけてるよね!ってか何で周助がシングルス2なんだろ?やっぱりリョーマと赤也を戦わせたら可哀想ってゆー優しさかな?じゃなきゃ、普通シングルス1にするよね!!」
「そりゃぁ…作者さんの好みっしょ?」
「う~わ~!!もうリョーマ贔屓も甚だしい!」
「うんうん!確かにそれは言えてる!!」
笠原さんと松原さんで話が盛り上がり始め、更に後から来た中根さんも加わり騒ぎは大きくなっていった。
「…すごっ」
朝からあのテンションで「周助」なる人物を語り続ける笠原さん。
周りで見ているオレたちは、触れちゃいけない世界だと思った。
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短編小説目次
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確認事項
それは恋人たちの愛を確かめあうもの。
わかっていながらも、甘ったるい雰囲気の中、わざと尋ねるのだ。
「どこが好き?」と……。
「ね~ね~。トモくんって私のどこが好きなの?」
「全部vv」
デレデレと崩れた笑みで答える智裕。
彼にとっては、ゆうの全てが自分の全てであり、自分の全てはゆうの掌中にあるのだ。
だが、ゆうにそんな気はサラサラなく。
「はぁ?もっとマジメに答えなさいよ。バーカ」
軽く足蹴にされ、それにすら愛を感じながら智裕は言った。
「全部は全部なんだよぉ~。ゆうの目も、鼻も、耳も、口も首筋も、指も…」
言いながら、その部位に触れたり、悪戯に口付ける。
ゆうはくすぐったそうに身を捩らせながら、クスクスと笑う。
「もぉ~わかったわかった。わかったからぁ!………どけ!!」
智裕を引き剥がすと、ゆうは上目使いに彼を見上げる。
「でも、嫌なとこの1つや2つあるでしょ?」
「ない!!」
「うそつけぇ!絶対あるわよ。よ~~~~く考えてみなさい」
「………やっぱりないよぉ」
頼りなさげな声で呟くと、そのままゆうを抱きしめる智裕。
「だって、俺はゆうの全部が好きだもん♪」
「ホントのホントに?」
抵抗する間もなく、腕の中に収まってしまったゆうは、不機嫌そうに尋ねた。
「ホントのホント」
「ホントのホントのホント?」
「ホントのホントのホント!」
「ふ~ん。じゃあさ、“ちょっとここは直してほしいなぁ~”とかある?日常の不満でもいいわよ」
「う~ん………」
ゆうを抱きしめたまま、考えこむ智裕。
そんな彼の手をペシペシ叩きながら、ゆうは答えを待った。
「……もっと優しくしてほしーな」
「私、優しいじゃん。今とかすんごくvv」
「そうだけど!そうじゃなくて…」
智裕は少し躊躇うように間をあけ、それから言った。
「普段から、もうちょっと優しくしてほしいなぁ~…って」
「Mなのに?」
「Mだけど!優しくされたいのぉ~」
男女が逆転したかのように、智裕はゆうにぎゅっと抱きつく。
一応、ゆうは抱きとめるが、心ここにあらず。何かを考えているようだった。
「…ゆう~?」
「全部じゃないじゃん」
開口一番、にっこりと微笑みながら、ゆうは言った。
智裕は瞬間、悟った。
「でも、だって、ゆうが『言って』って言ったから…」
「全部好きって言ったでしょ?なぁにちゃっかり『優しくしてvv』とか言ってんのよ!ふ~ん……そうかー。今までの私は優しくなかったかー。ごめんなさいね~。今日は、充分優しくしてあげるよvv私流のやり方でww」
「いや、充分優しいです!もう…」
「遠慮はしないで♪さぁ!!」
その後、あたりに智裕の悲鳴が響きわたっとか。
まぁ…「触らぬ神に祟りなし」だ。気にしない方が、身のためであろう。
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活動開始
「ライライ~。これ、お願い!!」
元々、女ばかり知り合いばかりの生徒会はすぐに馴染めた。
黒一点である和田くんも、最初の会議で「ライライ」とあだなを決められた。
ライライとは「頼りになる=信頼」の頼(ライ)。
文章能力もあって、更にパソコンが使えるということがわかり「コイツできる!!」というのは生徒会内でも容認されていた。
それをわかりやすく、且つ可愛く表したのがこのあだな。
「なんだかパンダみたい…」
そう言って、ライライは笑ってはいたが、このあだなは既に定着しつつある。
今日も近付きつつある会議の資料作りをライライに頼んでいた。
「あ、いいよ♪」
テストも近いというのに快く引き受けてくれるライライ。
資料原稿を渡すと、ふいに後ろから肩をたたかれた。
ふりかえると、そこには加納先輩がいた。
「9月28日ってあいてる?」
「ふぇ?えぇと…あいてると思いますが……」
「じゃあ、新旧生徒会で集まるから。他の人にも伝えといて」
「あ、はい!」
いつも突然現れて、ふっと消えていく先輩…。その後ろ姿を身ながら、何故か心に残るモヤモヤとした思い。
ん…待てよ…?
思いが形になっていき、私は「あっ!!!」と声を上げた。
びくっと驚いたのは…先輩ではなくライライ。
誰でもいい、とにかく確かめなければ…!
「28日って…テスト真っ只中だよね!?」
「うん…?あ、そうだね」
空を仰ぐように視線を上に向け、9月のカレンダーを思い浮かべたのだろう…ライライは頷いた。
「テスト中に集まるの!?勉強できないじゃん!!」
「まぁ……どうせ2教科だし。大丈夫だよ」
文句くるだろうなぁ~と思いつつ、テスト中の集合を他のメンバーに伝えた。
時間がないことと、スライドのリハーサルですぐ終わることを理由に挙げられたので、渋々みんなも承諾した。
「大体、スライドったってウチら全然話に入れてくれなかったじゃん」
「ってか存在を初めて知ったよ!」
「何で将棋部は一緒にスライド作りとかやってんのに、生徒会のウチらは手伝わせてもらえなかったんだろーね?」
「……忘れてたんでしょ。将棋部はずっと部室にいるから忘れなかったんじゃない?」
「はぁ~~~鬱だぁーーー!!」
文句の嵐だったのは言うまでもない。
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選挙の時
「これから生徒会役員選挙を始めます」
やっぱり10分以上かかって、やっと静かになった体育館。
でも、相変わらず司会の先生の声には「ひそひそ話」のバックミュージック付き。
「……選挙を遊びだと思ってんじゃないの?」
そんな呟きは放っておいて、私は自分の読む原稿に目を通し始めた。
無難すぎるくらいにつまらない文の羅列。
「古きを温め、新しきを知る」
この温故知新の考えを基盤とした、ありきたりな演説文。
しかし、斬新なアイデアを打ち出すのも、それをうまく表現し賛同を得るのも容易ではない。
結局、逃げの一手でしかないのだ。
それでも、信任投票は受かってしまうのだからさして問題ない。
「まぁ、始めますか」
一度、会が始まってしまえば、雑談が煩かろうが関係ない。
先生の司会も滞りなく進行し、候補者は1列に並び名前と希望役職を述べると後ろに下がった。
ここからは会長候補の私の演説。
本当…何で私1人が喋らなきゃならないのだろう。
そんな不満を感じつつ、私は壇上に立った。
「広く親しめる生徒会を目指し…」
「先輩方が今まで築き上げだものに、私たちが新たなものを重ねていく…温故知新の心を忘れずに……」
政治家の演説のような綺麗事を並び立て、それでいてお芝居のように演技っぽい喋り方。
まぁ…それが「素」なのだから仕方ない。
無難に自分を役目を終えると後ろに下がり、6人で並んで礼をする。そして袖に戻って行った。
その間に進行は先生に戻り、その場で投票用紙を配り始めた。
どうやら、このまま投票を済ます気らしい。
「公正な選挙もあったもんじゃないね…」
「相談しあってるよぉ~」
「うわぁ~これっていいわけ?」
「いいわけないし!来年度への申し送りその1だねぇ」
こうして、生徒会役員選挙は幕を閉じた。
勿論、翌日の結果は全員過半数の信任を得ており・・・
晴れて、第58期生徒会は結成された。
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僕は妹に恋をする
僕は妹に恋をする
「トモくんってさ、シスコンにはならないの?」
「えっ!何で??」
「だってロリコンじゃん。ロリがいけるなら妹にも萌え萌えしない?」
「しない!!絶対それはないな」
「何でよ~?」
「やっぱり一緒に暮らしてるからなぁ…嫌な面もいっぱい見てるし」
「でも、“お兄ちゃん”って響きは良くない?」
「いや、別に…」
「ふぅん…」
「何よぉ?」
「…お・兄・ちゃ・んvv」
「!?」
「ねぇ“お兄ちゃん”って嫌い~?」
「最高デス…(酔)こんな妹いたら襲っちゃうよぉ~」
「あれ?シスコンじゃないんでしょ??」
「ゆうが妹なら別~vvvv」
「妹萌えしないって言ってたのにねぇ…」
「ゆう、かわいいw」
「トモくんはバカだなぁ・・・」
そんな日常。
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選挙の日
5.選挙の日
「一年生は体育館に集まってください。二、三年生は指示があるまでまだ待機してください」
放送が入ると、外がざわつきだす。そんなざわつきの山を越えて、一足先に六人が集まった。
「演説するのは私だけだけど、名前と役職はみんな言ってね」
六人で集まったのは、これで三度目だろうか?
先生の号令の下、打ち合わせをしただけなのでお互い(特に和田くんとは)話すことはなかった。
しかし、一年生が入場し、二、三年生もぱらぱらと集まりだす頃。
ずっと舞台袖に居続けると、流石に暇を持て余したのか小声での会話が弾んでくる。
楓とも、クラスの二人とも話しなれていた私は、敢えて彼……和田くんに話しかけた。
「和田くんってさ、文系??」
「ううん。一応理系だよ」
「マジで!?」
先日の文章を思い出し、私は目を丸くした。
あのような文章を書く人なら絶対文系だと思っていた。
それなのに、理系で……この能力??
私の驚きように彼もびっくりしたらしく、少し戸惑っているようだった。
「あ~…正確に言うと、「理系を目指している」っていうのかな?数学より国語得意だし。でも将来の方向は理系なんだよね」
「なるほど。それじゃあ私と反対だね。私、文系になりたい理系なの」
夏休み前の試験も化学は良かったが、国語はいまいち奮わなかった。
初めての試験で慣れていないせいもあるのだろうが…「高校の古典」の難しさに頭を抱えてしまう。
「古典」については和田くんも同じ考えではあるみたいだった。
低すぎるくらいのバスの音は、少し聞き取りにくかったが、小声なりに試験の話で盛り上がっていた。
やっぱり目の前の選挙より、その先に控えている試験を気にしてしまう。
私一人しか喋らないわけだし、この調子じゃ適当だもんな…
袖からフロアを覗くと、結構な人数が集まっていた。しかし、いっこうに静まる気配はない。
「……うちの学校は小学校だったっけ?」
「むしろ動物園だよ。これじゃあね…」
いつのまにか他のメンバーもフロアを覗いていて…そろって溜め息をつく。
「司会の言葉も聞いてなさそうだし」
「こりゃ10分はかかるな」
「10分で済めば良い方かもね」
選挙はまだ、始まりそうにない。
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驚愕事実
4.驚愕事実
6人分の選挙用の文章が揃い、各クラスに配られた。
…なんか、変な感じ。
選挙の原稿を作る“自分”と、クラスで出来上がったそれを受け取る“自分”が全然別物のように思えた。
クラスの“自分”は、1人の候補者の文に目を通す。
まだ数えるほどしか会ったことない彼女……宗方華奈の文章もまた、なかなかのものだった。
だが、クラスの“自分”は、それ以上何か考えるわけでもなく、授業の準備に取りかかる。
候補者を一度集めようとか選挙の打ち合わせをしようとかいった考えは、部室に行くまではさらさら思いつかないだろう。
それに、今はすぐ訪れる選挙よりも、だんだんと迫りくる試験に気を取られていた。
「ゆう~!」
「ん、何??」
その日の夕方、部活に向かってる途中で楓に呼び止められた。
振り返ると、バイオリンを片手に持ち、楽譜やら音叉やらを抱える楓がいた。
「今、部室行ってきたんだけど……本番で喋るのはゆうだけらしいよ♪♪」
「本番って……選挙演説で!?」
「うん。時間ないし~信任だしw」
「うそぉ~~」
私は愕然と立ち尽くした。
苦労して書いたあの4人分は一体……
「じゃあ、4人分もいらなかったじゃん」
「プリントで配ったんだから必要だったよ♪ありがとねぇ~」
「………………あ~…もっと適当に作れば良かったぁ」
なんだかんだ言っても、読みやすさを考え試行錯誤した代物。
声に出して読まれることがないならば、もっと難しい言葉でかっこよくしたのに……。
深い溜め息と共に、がっくりと肩を落とすが…一方、楓はるんるん気分で歩いていく。
「まぁ、頑張りたまえ☆あ、もうすぐミーティングだよぉ」
楓の後ろ姿を見つめながら、再び大きな溜め息1つ。
バイオリン片手に、私も後ろに続いていった。
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設定・用語説明
☆M高校・・・進学校の端くれの公立高校。古さが自慢(笑)
☆M高校生徒会・・・会長1人、副会長2人まで、書記2人まで、会計2人までで構成される。
基本的に1年生で結成される。部室は西館四階の隅。
将棋部と新聞部と共用している。
☆部室・・・ここでは、基本的に生徒会室のこと。
管弦楽部の部室は「楽器庫」又は「音楽室」
☆部活・・・ここでは、基本的に生徒会以外の部活を指す。
今年度の生徒会は全員兼部しているが、生徒会とは区別するように。
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第二印象
3.第二印象
「できたぁ~!!」
なんとか完成させた4つの原稿。文は短いけれど、まぁなんとかなるだろう。
出来上がってすぐに美和子と那緒には渡した。あとは楓に渡せば一安心だ。
待ち合わせた部室で落ち合うと仕上がった原稿を手渡す。
「はい、これでどう?文、変なとこあるだろうから直しといてね」
「ありがと~w」
「笠原さん。佐倉さん。それ、原稿?」
「あ、はい…」
「そうですけど…」
パソコンに向かっていた加納先輩が急に話しかけてきた。楓と二人して振り返ると、先輩が近づいてきた。
「実は、原稿をパソコンに打ち込まないといけないんだよね」
「あぅ…!?」
「マジですか!?」
私たちの慌てぶりをみて、先輩は苦笑した。
「あ、俺やるから大丈夫だよ。うん、お疲れ」
心の中で安堵の息をつき、私たちは先輩にお礼を言った。
「え~と…他の子にも伝えた方がいいですよね?」
「そうだねぇ~。まぁ、持ってきてくれれば俺が打ちますよ。あ、和田くんはいいから。もう打ったやつ貰ったんで」
「へぇ~早いですね。…どんなかんじなんですか?」
「私も見てみたい♪」
「ん~いいよ。これ」
それは、ちょっとした好奇心。
「彼」がどんな人なのか。
拒絶と裏合わせにある「気まぐれな気持ち」が疼きだす…
一枚の紙を受け取り、楓とまじまじと覗き込む…。
「うまくない?」
「本当。一番うまいかも」
まだ見ぬもう一人の原稿を除けば、原稿を書いたのは全部私。その私が言うのだから間違いない。
当時の私には欠片もなかった「論理的展開」を彼は既に持っていた。
悔しい…そして、四人分書いた自分が情けなく思えた。
“コイツ…できる!”
悔しさは、益々彼への興味をかきたてていった。
第二印象…デキる文系少年(笑)
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4人分
ある日・・・
偶然集った立候補者4人が部室に行くと、先輩から当たり前のように驚愕の事実を告げられた。
「来週までに立候補者の言葉用意してね~」
2.4人分
冷静になれば、ごく常識的な成り行きなのだが、私たち4人は誰ひとりとして『立候補者の言葉』の存在を考えていなかった。
「あぁ~どうしよう!?」
「めっちゃめんどいし!!もぉ…」
「私に文才を求めないでよ!超理系なんだから」
口々に叫ぶ候補者…もとい友人たちに、先輩は「適当でいいからさぁ」と付け足した。
唖然としたまま、私たちは部室近くにある自分たちの教室に入っていった。
ぴしゃりと扉を閉めると堰を切ったように言葉が飛び交いだした。
「本当に要るの…?」
「どーせ、みんな見てくれないだろうにねぇ」
「信任なんだし、実際必要なくない?」
「確かに。先生とかもかなりいい加減だもんね」
「ってことで…ゆう、任せた☆」
先程から「超理系」と自負する佐倉楓…彼女とは小学校からの仲である。
文系仕事は私、理系仕事は楓というのが常だった。
今回、生徒会に誘った時も「私は会計で数字やるから、文章作成はゆうがやってね♪」と条件付きで承諾を得た。
なので、楓の分は元から書く気で心づもりはしてある。
私は二つ返事でOKした。
「あぁ~じゃあ私のも♪」
「ウチのもウチのもw」
「……マジで?」
同じクラスで立候補した中根美和子と松原那緒。
三人でよくつるんでいて、特に美和子とは入学時から「生徒会をやろう」と約束していた。
それに、いつのまにか那緒ともう一人…が加わり、女子校のような生徒会が出来上がろうとしているのだ。
勿論、彼女たちの分を書かなくてはならない…なんてことはない。
しかし、断るのも気が引ける。
“そういえば…文章作成なら任せろ!!って言っちゃったような…”
つい先日の記憶が蘇り、その時の自分を恨んだ。
任せろ!と言った手前、任せられても仕方ない。
「ん~…じゃあ、テーマは指定して」
「テーマ??」
「うん。“私はこういうことやります”ってやつ。いわゆる公約だよ?楓も何かない?」
「ない!」
「あのねぇ…即答かよ(苦笑)ちょっとは考えなさいよぉ!」
三人とも黙って考え始めた。
「………」
「……………」
「思いつかない…」
「てきとーでいいよぉ~w先輩も言ってたしね♪」
「適当ってねぇ~↓↓」
本当に適当にやるしかない。
選挙まで、あと一週間。
私は、言い知れぬ不安を感じていた。
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合縁奇縁
第一印象・・・・・・・・・最悪。
そんなところから始まった。
奇妙な二人の、奇妙な関係。
1.合縁奇縁
「笠原さん、笠原さん。この子が副会長立候補の和田智裕君。たしか、まだ会ったことなかったよね?」
「あ、はい・・・」
第58期生徒会。
その選挙が今度の9月に行われる。
今のところ、候補者は6人。その内の4人は既に知っている友人ばかり。
唯一知らない1人が・・・彼だった。
先輩が紹介してくれた和田智裕は、照れているような困っているような微妙な表情をしていた。
「男の子1人だねぇ~、ハーレムじゃん」
「そうだね(笑)」
極力、男子と面識を作りたくない私にとって、この男の存在は邪魔でしかなかった。
しかし、当初は彼の他にもう2人も入ろうとしていたのだから減っただけマシだと思わなければならない。
今後の生徒会を円滑に進める為にも、私は最上級の作り笑いを浮かべた。
「どうして生徒会入ろうと思ったの??」
「俺、中学でも生徒会やってて、元から入る気だったんだ。こういうの好きだし」
「あ、そうなんだぁw私もやってたんだよ♪あ、他の2人も??」
「ううん。他の2人は人数合わせで入れられそうだっただけ」
「へぇ~、人数合わせなんてあるんだ!?」
「らしいよ。今年は大丈夫だったみたいだけどね」
ついでに3人で辞退すれば良かったのに・・・
そんなことを心の中で呟きつつ、やっぱり笑顔で応える。
「今年はやる気あるからね~!!“女のノリ”にちゃんとついてこなきゃダメだよぉ」
「うん、がんばるよ!!」
いや、あのメンバーについてくるなんて無理だから!
ってか、絶対させない☆
やっぱり心の中では悪態をついていた。
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人物紹介。
人物関係を書かなきゃいけないことに気づいた。
だって、ゆう自身も名字設定ないしね。
人物紹介(随時更新)
笠原 ゆう(かさはら ゆう)
1988年1月2日生まれ。
第58期生徒会会長(1年生)
他、管弦楽部所属。
小さいことが大きな悩み。
漫画・・・特に、テニスの王子様が大好き。
和田 智裕(わだ ともひろ)
1988年1月26日生まれ。
第58期生徒会副会長(1年生)
他、将棋部所属。
鉄道が好き。
佐倉 楓(さくら かえで)
第58期生徒会会計(1年生)
他、管弦楽部所属。
ゆうとは、小学校から同じ(親しくなったのは中学2年から)
中根 美和子(なかね みわこ)
第58期生徒会副会長(1年生)
他、管弦楽部所属。
ゆうとは高校で同じクラス。入学式の時に知り合う。
松原 那緒(まつばら なお)
第58期生徒会書記(1年生)
他、合唱部、漫画研究部所属。
ゆうとは高校で同じクラス。たまたまゆうが声をかけたことから友情が芽生えた。
宗方 華奈(むなかた かな)
第58期生徒会書記(1年生)
他、合唱部、地学部所属。
那緒と毎朝一緒に学校に行っている。お母さんタイプ。
加納 利行(かのう としゆき)
元生徒会兼将棋部の先輩(2年生)
ゆうにトモくんを紹介した人。
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